私は中小企業診断士として、一通りの経営理論を学んできました(薄くですが。。)。皆さんも書籍や、会社の研修なので、経営理論を学ばれたことだと思います。皆さんどうでしょうか。使ってますでしょうか。使えてますでしょうか。そもそも使えますか?使えなく無いですか?と私はずっと思っておりまして。。そこで、「現場で実践!柔らかい経営理論」と題し、私自身が、学んだ経営理論を柔らかく解きほぐし、現場で実践しているやり方をお届けしていきたいと思います。今回は、皆さんもよく遭遇するかもですが、新規事業や、新しい取組を幹部に提案するときに、「本当にそれ大丈夫か???」と質問攻めに会うようなこと、ありませんか。。そんな時に、私がいつも使っていて、比較的手軽に使って頂ける「事業性評価のフレームワーク」をご紹介し、皆さんに現場実務で使って頂きたいと思います!
はじめに:聞き手の立場になって考えられるか
提案を通すときに、一番大切なのは、「聞き手の立場になって考えられるか」だと私は思っています。私の今までの経験から、幹部層が一番聞きたいのは、「売れるか(市場性)」「勝てるか(競争優位性)」「儲かるか(経済性)」「できるか(実現性)」の四つ。これがしっかりと抑えられれば、ほぼカバーできると思います。逆に言うと、これを外した説明をしても、聞き手には響かない・これらは絶対外すことが出来ない4要素。シンプルにこの4要素にフォーカスし、真摯に丁寧に説明することを、心掛けてほしいと思います。
全体像は極めてシンプルです。売れる見込みがあり、競合に勝てる道筋があり、採算が合い、現実にやり切れるのか。この順で確かめます。大事なのは、可能性の大きさを語る前に「取りに行ける現実の範囲」を見える形に落とすことです。机上の空論にならないよう、顧客・数量・価格・期間といった具体に落としていきます。

売れるか(市場性):手の届く市場を数字で描く
市場性は「どれだけ大きいか」だけでなく、「私たちがどこから、どれくらい取れるか」を語ることが肝心です。総市場の大きさは冒頭で示し、将来の成長性にも言及。そのうえで、自社が最初に狙う地域や顧客群、製品・サービスのカテゴリをしぼり、手の届く範囲を現実的に積み上げます。例えば、既存顧客の横展開で四半期あたり何件、代理店経由で何件、入札や共催イベントで何件という形で、獲得経路と時系列の見取り図を用意します。あわせて需要が生まれる理由を短く示します。規制の変化、技術の普及、人口動態、顧客行動の変化など、2~3点にしぼって外部データやヒアリングで裏づけると、納得感が高まります。
勝てるか(競争優位性):「選ばれる理由」と「追いつかれにくさ」を示す
競争相手は、同業他社だけではありません。内製、海外調達といった選択肢も含めて、お客様の目線で比較表を思い浮かべます。そのうえで、私たちが選ばれる理由を、できれば数字も交えて語りたいです。例えば「精度や不良率などの品質」「導入から稼働までの速さ」「保守や監査対応の信頼性」「単位コストの低さ」などです。強みは欲張らず、伝わる二つに絞ると強く響きます。あわせて、どうやってそれを守るのかも示します。標準化や認証、学習曲線、切り替えコスト(他社に替えると再検証に時間がかかる等)といった「追いつかれにくさ」を、簡潔に添えると安心してもらえます。
儲かるか(経済性):一件あたりの粗利と全体の損益の道筋を見せる
採算は「一件いくら残るか」と「どれくらい積み上がるか」を分けて説明します。まず、販売単価と主要な原価をならして示し、一件あたりの粗利を明確にします。次に、固定費(人件費、設備の減価、共通経費)を見える化し、どの水準で損益分岐を越えるのか、いつ黒字化するのかを時系列で描きます。価格や数量が変動したときにどうなるかも、悲観・中位・楽観の三つの見立てで触れておくと、意思決定がしやすくなります。設備投資が必要なら、投資額と生産能力、回収の目安も示します。
できるか(実現性):人・設備・許認可・時間の現実を並べる
最後に、実行の裏づけです。必要な人材や協力会社、設備、許認可を棚卸しし、どこから調達し、どのくらいの時間がかかるのかを記します。作業は並行できるものと順番が大事なものに分け、四半期単位のマイルストーンと完了の条件を決めておきます。想定されるリスクは多く並べず、重要な三つ前後にしぼり、発生の可能性と影響度、それに対する手当(代替案、保険、契約条件、二重化など)を一言ずつそえます。「やり切れる感」を持ってもらうことが目的です。
事例:在宅用パルスオキシメータ向けセンサー部品の受託製造
売れるか(市場性)
在宅医療と遠隔診療の広がりを受け、パルスオキシメータ本体の国内市場は、2025年度で約350億円、2030年度で約400億円(年平均成長率約3%)と想定します。アジア主要国を含む近隣市場も堅調で、同期間に年4~5%程度の伸びを見込みます。
私たちが対象とするのは、LEDとフォトダイオード、ケーブル、樹脂ハウジングを一体化した光学センサーモジュールの調達領域です。この部位の国内調達額は、2025年度で約45億円、2030年度で約55億円(年平均成長率約4%)を想定します。
参入の入り口は、国内OEM1社の更新需要から始め、2年目に国内もう1社、3年目にアジアのOEM1社へ広げます。3年目は年間約200万個・平均単価約250円の受注で、売上は約5億円を見込みます。高齢化の進行、在宅管理の普及、保険運用の見直しといった需要の押し上げ要因とも整合する見立てです。
勝てるか(競争優位性)
選ばれる理由は、「測定の安定性」と「立ち上げの速さ」にあります。光学系の位置精度と遮光設計を標準化し、装着条件のばらつきがあっても安定した信号が得られるように生産設計を固めます。治具や検査手順は内製の標準を流用し、モデル更新時も短期間で量産へ移行できる体制を整えます。
運用面では、医療機器の品質管理基準に沿ったトレーサビリティと監査対応を徹底し、是正のスピードで信頼を積み上げます。医療機器は切り替えに時間がかかるため、品質と安定供給を維持できれば継続率の高い取引になりやすい点も優位性として働きます。
儲かるか(経済性)
価格は既存機種の更新需要と新規モデルの立ち上げで安定的に推移する前提です。段階的な自動化と作業の標準化で原価を抑え、3年目の売上約5億円に対して営業利益は約8,000万円(営業利益率の目安約16%)を見込みます。仮に単価が一時的に下振れしても、複数顧客への横展開と共通部品の活用で利益水準を維持できる設計にします。
できるか(実現性)
体制は品質保証・薬事の専任を核に、製造と検査の多能工チームで臨みます。必要な登録・認証と工程の検証は、外部の専門家と並走して一年以内の完了を目指します。試作から量産までの段取りは並行できる作業を増やし、立ち上げ期間を短縮します。主要なリスクは、認証手続きの遅延、需要の変動、立ち上げ初期の歩留まりです。これに対しては、事前相談と予備審査の活用、複数顧客の並走による需要の平準化、初期キャパシティの余裕確保と標準条件への早期収束で手当てを用意します。以上の前提で、無理のない立ち上げから拡大までの実行計画を描けると考えます。
実務での伝え方:不確実性は隠さず、段取りで安心感をつくる
提案では、都合の悪い点を包み隠さずにお伝えするほうが信頼されます。見通しの幅があるところは、幅を正直に示し、幅を狭めるための打ち手(テストの回数、先行試作、並走する協力会社の確保など)も合わせて示します。決める側は「最悪のときにどこまで耐えられるか」を知りたがりますので、撤退ラインやセーフティーネットも最初から言葉にしておくと、腹落ちが早くなります。
最後に:4つの要素を確実に抑え、真摯に。丁寧に。
今回、事業性評価の4つのフレームワークをご紹介しました。本当に必要な4要素に絞り込み、これを深め、説明することで、絶大な効果を発揮します。また、このブログでは何度も申し上げているのですが、同じフレームワーク・フォーマットは何度も使いまわしましょう。使いまわすことで、時短とクオリティ確保に繋がり、また使いまわし、積み重ねることで、「使いこなし力」がアップし、更に時短とクオリティが増していきます。是非今回の「売れるか・勝てるか・儲かるか・できるか」を手帳にメモして頂き、何度も使いまわしてほしいと思います!
「売れるか・勝てるか・儲かるか・できるか」については、下記も勉強になりますので、是非ご一読下さい!
売れる/勝てる/儲かる/できる:事業戦略を成功させる4つの鍵
今回もお読み頂き、有難うございました。もし気に入って頂けましたら、是非SNSでのシェアを宜しくお願いします!


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