私もサラリーマンとしてとある企業に勤めておりますが、サラリーマンには「役職定年」がやってきます。「役職定年を超えて生き残る」ことを目指すのもありますが、豊かな経験を積み重ね、優れた経験を持つ方は、たとえ「役職定年」になったとしても、会社で重宝がられ、豊かなサラリーマン生活を謳歌されています。また独立して、継続輝き続ける方も多くいらっしゃいます。私がそんな先輩方に学ばせて頂きながら、自分でも実践しているメソッドを「サバイバル仕事術」と題し、実例を交えながらお届けしたいと思います。今回は「柔らかい仮説思考」と題し、思考停止になることなく、「仮説思考」で前に進むことの重要性について、語ってみたいと思います。
「仮説思考」とは ~一般的な定義~
「仮説思考」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、一般的な定義を確認しておきたいと思います。私が「仮説思考」という言葉を初めて知ったのは、ボストンコンサツティンググループ(BCG)の代表であった内田和成さんの著書「仮説思考 ~BCG流問題発見・解決の発想法~」に触れたときでした。2006年発刊の本ですが、当時ベストセラーになっていましたので、大変有名な本です。この本の中では、「仮説思考」について、下記のような定義があります。
仮説思考とは、物事を「答え」から考えることである。すなわち、課題を分析して答えを出すのではなく、先に答えを出し、それを分析して答えを出す。
結構ハードル高めの印象ですよね。。物事を「答え」から考えるというのは、確かにそうなんですが、「答え」がわからないから困っているというのもあり。。目の前にこの定義が出てくると、「ちょっと難しそうだな」と尻込みをしてしまいますよね。。ではあるのですが、私は、もう少し柔らかく考えてまして、私なりの「仮説思考」を実務に取り入れて、概ね成功していると思っています。
私は「仮説思考」をも少し柔らかく考えています
私は、これまでの30年のビジネス経験の中で、現場が持っている「肌感覚」というのが非常に重要で貴重だと実感しています。仮設を「答え」というほど重くは考えず、「肌感覚」から「これってあるよね」というものを「仮の方向性=仮説」に設定して、とにかく前に進む、ということを実務で実践しています。
皆さんもご経験があると思いますが、色々な議論をしているとき、抑えるべきポイントや、課題がもうたくさん出てきて、あれもこれもという状況になって、取っ散らかってしまうことがあると思います。こうなってしまって、「結論は次回の会議まで各人で考えてきて」となっては、もう最悪です。。こういう時に、この「柔らかい仮説思考」が強力なツールになります。
取っ散らかったところで、自分たちの肌感覚を信じて「仮の方向性」を設定し、この方向性が正しいかどうかを検証するために、各人がやることに落とし込んで、立ちどまらずに、前に進んでいける、と思います。私は、取っ散らかった状況になったときに、現場を一番良く知る人に、「●●さん、現場の肌感覚として、筋がよさそうな方向性はどれですか?」と良く聞きます。ここで聞けた方向性が、その後大外ししたということは、ほとんど無いですね。
事例:中堅の化粧品メーカーでの「柔らかい仮説思考」
今回は私が中小企業診断士として関わった事例を、少し公開用にアレンジしてお届けしたいと思います。
主に美容院向けの業務用化粧品を手掛ける中堅メーカーを支援した事例です。美容院向け化粧品は、市場の伸びがあまり期待できない中、一般販売品で人気の韓国コスメが、美容院向けにも侵食してきている状況で、競争が更に厳しくなっている状況でした、この現状をどう打開するかについての議論をしていたのですが、どちらかというとネガティブな意見が多い状況。議論はまさしく「取っ散らかっている」状況で、収拾がつかない状況でした。
その時、私は「まずは今後の方向性として考えられる方向性を、現場を良くご存じの方の肌感覚で、難易度高、難易度中、難易度低、で整理しませんか」と提案をさせて頂きました。まず取っ散らかった状況を解きほぐす感じでしょうか。以前の資料作成に関するエントリーで「3で整理する」ことの重要性について述べていますが、私はこういうシチュエーションでも「3」で整理を試みることが多いですね。私は「3」が大好き、と公言しています(笑)。
この時は、
・難易度高:医療機関向けドクターコスメへの進出
・難易度中:美容院用ヘアケア製品ラインアップの拡充
・難易度低:販路開拓(美容院の新規開拓)
という整理をしました。その後の議論で、その会社の中でも現場を牽引するリーダーである一郎さん(仮称)が、「私の肌感覚では、難易度高いが、ドクターコスメへの進出を仮の方向性として検証したい」とおっしゃって頂き、全会一致で、仮の方向性を決めました。この後は、各人のやることを決めて、無事に検討を前に進めることができました。下記に、簡単にBefore・Afterで整理したものを載せておきます。
今回のケースで行くと、取っ散らかった状態から、「方向性を定めるためには、まずは市場・顧客を調べよう」となってしまうと、調査にかなり時間がかかり、全体スケジュールは遅くなってしまうことでしょう。この「方向性決めるための調査」というのは、現場を良く知る人の「肌感覚」である程度代替できて、そのほうが圧倒的な時短が可能、これは私のこれまでの経験での30年のビジネス経験での「肌感覚」ですね。
最後に ~重要なのは「止まらない」こと~
ここまで私なりに柔らかく解釈した「柔らかい仮説思考」について語ってきました。私がなぜ「柔らかい仮説思考」にこだわるかというと、これが非常に重要なのですが、何か物事を考える時に、「前に進んでいかないとわからないことが山ほどある」ということなんですね。机の上であれこれ調べたり、考えたりすることに多大なる時間をかけて、前に進むことをやめると、それはものすごい時間を浪費してしまうことを、私は何度も経験しています。なので、私たちは「前に進むことを決して止めない」ことが本当に重要なんですね。そして、「とにかく歩みを止めず、前に進めるため」には、この「柔らかい仮説思考」が有効であると実感しているからなんですね。
最初に述べた仮説思考で言うと、「仮説=答え」という感じで、結構ハードル高いイメージなのですが、「仮説=前に進めるための仮の方向性」ぐらいで「柔らかく」考えて頂き、是非皆さんの実践に取り入れて頂きたいと思います!
私から皆さんへのご提案です。もし混沌とした議論の中にあなたが居たら、是非席を立ちあがり、会議室の隅のホワイトボードを持ってきて欲しいと思います。そのホワイトボードに、あなたが主導し、その議論にふさわしい3つの切り口で混沌を整理し、参加者の中で一番現場に精通している人の「肌感覚」で、「仮説=仮の方向性」を設定するところまで先導して欲しいと思います。これができれば、あなたは間違いなく上司・部下・同僚から一目置かれることでしょう!
「柔らかく考えて、現場実務でつかいこなす」。これが私のサバイバル仕事術の根っこの考え方です!今後も、私の・私なりのサバイバル仕事術をお届けしていきたいと思います!
今回もお読み頂き、有難うございました。もし気に入って頂けましたら、是非SNSでのシェアを宜しくお願いします!
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